2010年12月27日月曜日

鉄の骨(講談社)

著者:池井戸潤 出版社:講談社 発行年:2009年 本体価格:1800円 評価:☆☆☆☆☆
「談合」というともちろん犯罪ではある。が高度経済成長期にはどこの建設会社もおそらく公共事業の入札時には手をそめていたはずのものだ。談合が犯罪なのは、弱小建設会社の新規参入を妨げるほか、市場原理にゆだねればおそらく相当安値で発注できたはずの建設工事が割高となり納税者の負担となる…といったところか。新入社員の「平太」はある理由から談合の情報を収集して入札する「業務課」に配属される。区役所の小さな工事の入札に新規の事業者が考えられない安値で落札。同業他社も参入して大規模工事の次の入札の準備を始めるが…。といったあらすじで20代の恋愛模様などもからめて一気に読ませる展開。「談合」は「必要悪」という論理にも一定の理解を示しつつも、最終的には犯罪に手を染めるか染めないかといった二者択一に追い込まれていく。「談合」の「雰囲気」を理解するにはかなりいい教材だろう。一方で「談合」摘発の捜査を進める東京地検特捜部の地道な捜査ぶりも描写されており、リアリティが増す。

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