2010年12月10日金曜日

悪名高き皇帝たち(二)(第18巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2005年(文庫版) 本体価格:400円(文庫版)
中学生のときに「幻魔大戦」シリーズにはまってしまったが、考えてみると自分はシリーズ物に弱いのだ。ヒマさえあれば「ローマ人の物語」シリーズを読み、朝はエスカレータの中、さらには帰宅途中の健康サウナのリラクゼーションルームでも「ローマ人の物語」。理由はあるが、やはり面白いの一言に尽きる。健康ランドのリラクゼーションルームでローマ人がお風呂好きだったという話を読むと、なるほどなあとつくづく思う。効率的で、さらには実学的な生き方で、しかし人生をほどほどに楽しむとなるとお風呂が最高のエンターテイメントってことになる。
さてこの18巻ではカプリ島からローマ帝国を遠隔操作したティベリウスの後世と、わずか3年半で殺害されたカリグラが取り扱われる。一般に流布しているイメージを著者は実証的に覆してみせるが、さすがにカリグラについては文字通り「悪名高き皇帝」とするしかなかったようだ。アウグスティヌスの血を引く25歳の若者だが、養子にしていたゲメルスを殺害、最高神ユピテルとの同化による神格化、剣闘士試合と戦車競争の解禁、競技場の創設、4人の女性との結婚、国家反逆罪法による死刑、アレクサンドロスで発生したギリシア民族とユダヤ民族の対立、そしてテロ。近衛大隊や元老院階級を敵にまわして最後は妻と娘とともに殺害されるという顛末だが、著者は興味本位の話題や根拠のないエピソードを排除するためか、カリグラについてはあまり触れずに18巻が終わる。国家財政の破綻や外交問題の処理の失敗…というだけでテロにあったのでは浮かばれまい。カリグラがなぜそうなったのか、は次の皇帝となるクラウディウスと対比して「理由」が読者には想像できるように配慮されている。

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