2012年6月30日土曜日

廃墟に乞う(文藝春秋)

著者:佐々木讓 出版社:文藝春秋 発行年:2012年(文庫本) 本体価格:619円(文庫本)
 直木賞受賞作品。とはいえ浅田次郎などもそうだったが、直木賞受賞作品よりも1~2作品ほど手前のほうが面白かったりするのは気のせいか。とある事情で北海道警を休職中の捜査1課刑事仙道。とことんまで救いのない短編が続いてラストで…という展開になる。精神を休めるための休暇だがいろいろな人から「お願い」をされるあたり、この仙道という刑事は捜査1課の刑事らしくない。「捜査の手伝い」などを「横」から合法的におこなうシチュエーションの描写がうまい。いかに警察官でもほかの署の縄張りにズカズカ踏み込んでいくわけにはいかないが、そのあたりの情報収集方法は腕利きの刑事だったのだな、と読者に自然に思わせてくれる展開。まあ推理を楽しむというよりは、いろいろあった中年刑事が魂を喪失して再び自分を取り戻していくという「復活」の物語といえようか。

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