2012年6月4日月曜日

バイオ発電(ワック)

著者:坂口謙吾 東京理科大学出版センター編 出版社:ワック 発行年:2012年 本体価格:571円
 東日本大震災直後の福島原子力発電所の事故後、エネルギー問題に非常に関心をもつようになった。風力発電や太陽光発電では安定した電力供給は難しい。また火力発電では大気汚染の問題が残る。原子力発電は確かにコストが安くて大気汚染のリスクは少ないが、もう一回事故を起こせば国際社会での日本の信認は確実に失われる。そこで技術面から提案がでたのがこの本のバイオ発電。ブドウ糖を酸化する科学反応ででてくる電気を利用しようというもので、化学式も多少でてくるが素人にもわかりやすく著述されている。さらに潮力発電や太陽光発電と太陽熱発電との違いなども解説されているのが嬉しい。
 食料品をエネルギー源にすると先物市場などで商品価格が高騰し、それが現物市場に影響するというデメリットも考慮する必要があるが、バイオ発電をめぐるそうした懸念についてもしっかりフォローされている。ただ農産物やあるいはバイオマスを利用するにしても、一定規模以上の農産物の安定確保はやはり必要になる。設備の敷地面積なども一定程度確保する必要性がありそうだが、農業という生産に不安定要素が残る部分に依拠する点では、バイオ燃料などとも共通する弱点があるように感じた。ただ技術面からのこうした提言はもっとなされるべきだろうと思う。図やグラフも豊富に掲載されており、値段と比較して内容面はかなり充実。

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