2012年6月20日水曜日

決算書の9割は嘘である(幻冬舎)

著者:大村大次郎 出版社:幻冬舎 発行年:2012年 本体価格:760円
 元国税調査官による企業決算の裏側を見抜く指南。決算書は複式簿記で作成されるが、貸借が一致していても必ずしも「正しい」というわけではない。掛け売上を計上すれば貸借は一致していても(回収可能性がない)売掛金の計上はできる。人為的に作成されたデータであるため、また会計上の真実は「相対的真実」とされているため、どうしてもどこかにフィクションが混じる。そのフィクションを見抜こうというのがこの本で、業績が良くない企業は在庫を水増し計上するとか業績がよすぎる会社は在庫を低めに見積もるなどの技術に感心する。新書ではあるが実践的な技術が多数紹介されており、株式投資などをする投資家にも役立つ内容だろう。また複式簿記を勉強しはじめた学生などにも複式簿記の限界と可能性を学ぶいい本になると思う。けっして著者は財務諸表を軽視しているわけではなく、最後まで読むと財務諸表も重要な資料にしていることがわかる。財務諸表とそのほかの利益率や株主構成、テレビなどの経営者のインタビューなど非会計情報なども織り込んで企業分析をおこなおう…としている点が実践的だ。脱税をする企業のほとんどが同族会社という指摘とその理由にも納得。これで760円は安い。

0 件のコメント: