2012年6月19日火曜日

教科書なき時代の食品流通(冷凍食品新聞社)

著者:白石吉平 出版社:冷凍食品新聞社 発行年:2005年 本体価格:2500円
 「肉のハナマサ」を題材に取り上げ、食品流通の在り方をさぐる。トレーサビリティよりもブランドの向上を、という主張には納得するものの、いくらブランドがよくても本当にその食品が有機農産物なのかあるいは減農薬野菜なのかといったあたりはやはり気になる。青果物の場合には工業製品よりも自然の状況に左右される度合いは大きいが、かといって輸入農産物と国内農産物との違いまで気にしないでいるわけにもいかない。原理原則は著者の主張が正しいが、では流通の現場の小売商や卸売のすべてが、原理原則でビジネスができるかどうかはまた別問題。狭い商圏のなかで競合他社が価格攻勢をかけてきたら即決でそれに応じないと在庫が生じるリスクもある。食品流通が工業製品の流通ほど合理的になれないのは、やはり消費者段階で零細・分散化しているのと、日持ちがしない商品特性によるものだろう。商流と物流の分離による卸売市場の改革論や改正JAS法などは元農林水産省の著者らしいわかりやすい説明。

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