2012年6月10日日曜日

アイ・アム・ア・ヒーロー 第1巻~第9巻(小学館)

著者:花沢健吾 出版社:小学館 発行年:2009年~ 本体価格:533円
 主人公は「鈴木英雄」。漫画家を志し、いったんは週刊誌に連載をもつが途中で打ち切り。ほかの漫画家のアシスタントをしながら生活をしのぐ。極端なビビリでしかも妄想癖がある。「自分の人生ですら脇役」と自嘲気味に生活しているが、アシスタントをしながら知り合った恋人の「てっちゃん」との逢瀬だけが楽しみ…。
 そうした脇役っぽい主役が、突然の「伝染病」に巻き込まれ、オドオドと生き抜いていく。第1巻ではただひたすら小市民的に生きていくが、次第に自主的な行動も増え、妄想も減少。
 終末的な漫画といえば、古くは「サバイバル」。さらにその後には「ドラゴンヘッド」があった。「ドラゴンヘッド」はただひたすら破滅に向かって物語が進行していく予感が漂うが、この漫画ではただひたすら「生きていく」というメッセージが伝わってくる。超人的な能力などなにも持ち合わせていない35歳独身のオッサンが、自分の中の小さな倫理観を維持して生きていく姿が心強い。現在は「生き地獄」の御殿場アウトレットモールから東京方面に向けて移動中というところで第9巻が終了。かすかに見えてきた「仲間」と生きる希望だが、もちろんこのままではこの物語は終了すまい。かろうじて得た「生きがい」がもし失われ、それでもなお「鈴木英雄」が生きようとするのかしないのか。なんだか次のクライマックスはそうした生きるエネルギーをどこまでギリギリ維持できるのかといったあたりにありそうだ。

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