2012年6月24日日曜日

ロジスティクス入門(日本経済新聞出版社)

著者:中田信哉 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2004年 本体価格:830円
 「入門」と書いてはあるが、けっこう難しい内容。ロジスティクスの前に「物流」という概念があり、「物流」という概念のまえに「保管・輸送・包装・流通加工」といった今では「物流」でひとくくりにされている諸活動がある。高度経済成長期には保管は保管、輸送は輸送だったが現在ではこれを物流として一括してとらえ、ロジスティクスは(日本では)一種のマネジメント的意味合いすらおびた一種のシステム論となっている。アメリカのロジスティクスは日本の物流理論と相当に重複しているため、たとえばアメリカの物流の本を読んでも日本のロジスティクスの理解にはあまり役にたたない。あくまで原材料の調達から製品製造、製品の出荷、販売という一連の流れを「全体」で把握して、そこから個々の活動をみていくという考え方なので、輸送を効率化して保管を効率化して、さらに全体を効率化して…という物流理論とは違うアプローチになる。
 まあ、一種の「枠組み」を設定してそこから具体的な活動をみていくということだからやはり一種のシステム論だ。物流論が一種の帰納法とするとロジスティクスは演繹法という(やや乱暴だが)そういう理解もできるかもしれない。「こういう商品の輸送システムはどうあるべきか」から情報システムやら物流センターの設置やらを考えていくということであれば、物流センターの設置を所与として物流コストの削減を考える物流論とはまるで違うアプローチということになる。
 書籍でいえば「こういう原稿があるからコストを削減してこう作ろう」というアプローチもあれば、「市場のニーズがこうなっているから著者はこうしてページ割はこうして…」と考えるのがロジスティクスといえるだろうか。実際には両方が融合していることも多いとは思うけれども。

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