2011年10月30日日曜日

革命のライオン(新潮社)

著者:佐藤賢一 出版社:新潮社 発行年:2011年 本体価格:476円
フランス革命を扱った小説で単行本では全10巻の予定が全12巻完結になったというシリーズもの。シリーズものには非常に弱く、だいたい大部のシリーズにかぎって、はずれは少ない(はずれだったら途中で打ち切りになっていたはずだし)。で、この本も1789年のベルサイユ宮殿に財務長官ネッケルがかけつける場面から始まるが非常に面白いのである。この1巻ではまだマリー・アントワネットは三部会に少し登壇するだけで登場人物の重要な役割はしめていない。むしろこれまで脇役的存在だったミラボー、ネッケル、デムーランといった人々が小説のなかで動き出す。ロベスピエールの扱いやルイ16世の扱いも既存のフランス革命の小説や映画とは微妙に異なる。「素材」として狩りや錠前いじりが好きなフランス国王であった…としても、作家の解釈によってはさまざまな人物像が描写されるものだ。で、絶対的な歴史的真実なるものが存在しない以上、こうした解釈の面白さは、必ずや後世の代の歴史的解釈も自由かつ柔軟にするものではないかと思う。本の装丁もお洒落で、さらに解説は池上彰さんという豪華さ。

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