2011年10月14日金曜日

大震災で日本は金持ちになるか、貧乏になるか(幻冬舎)

著者:高橋洋一 三橋貴明 出版社:幻冬舎 発行年:2011年 本体価格:952円
大震災と福島原子力発電所の事故による被害は当初よりもさらに拡大の様相を呈している。当然のことながら復興のための公共支出が必要になるが、その財源として国債か増税かで政治の意見は2分されている。この本の著者は、震災復興の財源は国債でまかない、総需要を高めることでGDPを上昇させるというケインジアン的スタンスをとっている。一方、野田総理大臣の軸足は増税に傾いているようだ。著者は国債整理基金の取り崩しや国債発行の日銀引き受けによる金融緩和政策という総需要刺激策をとる。個人的な実感とすれば、財源は国債の発行と増税の両方でまかなうべきだと考える。まず、国債が増加すれば、国債の市場価格が下がる。したがって市場の長期金利は上昇し、外貨が流れ込んでくるため円高傾向を促進。輸出は減少して輸入が増加し、貿易収支は緩やかに黒字を減少させていく。またマネーが国債に吸収されるので資金需要を逼迫させるだろう。日本銀行引き受けの場合にはマネーは増加するが、今度はインフレーションを起こす可能性が高くなる。ただし、復興に必要な財源としてすべてを国債でまかなうことはできないが、この円高と円安のバランスはだれにも見極めることが難しい。したがって一定の比率で国債を増発し、残りは増税でまかなうという折衷案が一番望ましい。ある意味ではきわめてシンプルなケインズ的政策を著者はうったえているが、おそらくこれはこの二人の確信犯的言動ではないかと推測している。国債の増発で、円高が促進するリスク、日銀引き受けによるインフレのリスクを織り込んでいないわけはない。急速に「増税やむなし」の雰囲気にアンチをとなえる役割をはたしているのがこの本の役割ではないか…と推察している。

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