2011年10月11日火曜日

政権交代の悪夢(新潮社)

著者:阿比留瑠比 出版社:新潮社 発行年:2011年 本体価格:720円
産経新聞政治部記者による政権交代の描写。日教組と民主党のつながり、鳩山政権と沖縄問題、尖閣諸島問題などを取り扱う。民主党については今が叩きどき。とはいえ、自由民主党も先日電力会社の接待ぶりが朝日新聞で報道され、やや分が悪い。政党支持率では民主党が自由民主党を上回った。「卑怯」など一刀両断にする筆っぷりがこの本の魅力か〈156ページ)。ただしジャーナリストではあれど、「管首相をなぞらえた替え歌」〈202ページ)など、本当に永田町全体ではやっていたのかどうか、うたがわしい記述もある。感情的な政治家に対しては非情に厳しい書きっぷりだが、新聞記者もあまり特定の政党に対して感情的になるのは、見苦しい。巻末になると、著者がどうやら自由民主党、とりわけ農村型保守政党から都市型保守政党に生まれ変わろうとしていた小泉政権のころの自由民主党に共感しているのがわかってくる。民主党の「まとまり」のない総覧型政策(場当たり的ともいう)が問題なのもよくわかる。ただし、農村をはじめとする日本の既存の産業にどっぷりつかっていた自由民主党については、もっと突っ込んだ筆をみせてほしい。電力業界についても、民主党はまだ旧民社党グループと連合の一部とのコネクションですんだかもしれないが、自由民主党と電力会社だったらもう同じ穴の狢といっていいほど、相互に金と接待がいきかっていたはず。世界史に残る原子力発電所の事故についても、民主党をうわまわる問題解決能力を示せたのかどうか、その検証はこれからじっくり進めるべきだろう。気のせいか、自由民主党の政治家は「実績あふれるわが党」とはいうが、では具体的な政策はというと見事なまでに示せていない。政権交代は確かに悪夢の部分はあった。ただし、旧保守政権のもとでは見ることができなかった「現実」をも大衆は見ることができた。それは数少ない民主党政権のメリットだったとは思う。

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