2011年10月16日日曜日

お金の流れが変わった!(PHP研究所)

著者:大前研一 出版社:PHP研究所 発行年:2011年 本体価格:724円
ある意味では不運な本でもある。2011年1月に発行されたため、原子力発電についてはクリーンで安全…という著述があり(大前研一氏は原子力工学をマサチューセッツで専攻)、未来予測については読者に疑義をいだかせる一因にもなっている。ただ、JALの救済をたとえばJR東日本などが子会社化するといったアイデアは豊富。資本を世界中からよびよせていたアメリカの高金利政策についてもローレンス・サマーズやグリーンスパンにその意思があったかどうかは不明なものの、わかりやすく解説されている。中国の経済政策についても貿易主導の総需要政策から内需拡大に移行した経緯などは理解しやすい解説だ。またパキスタンと中国の外交関係に内陸部の重要拠点カシュガルがあることなど、外交政策についても理解しやすい。ギリシアの貿易赤字の問題とEUの問題なども新書にしてはコンパクトにまとめられている。是々非々でいけば、新書である程度アウトラインをつかまえておいて、その後詳細については賛否両論ある専門書に移行していくべき内容だろう。ロシアの半導体部門のエピソードやトルコとフン族大移動の話など、興味深いエピソードも非情に多い。大前氏の著作にはビジネスパーソンが非情に多いと推定されるが、未来予測があたるあたらないということ以外に、興味深いエピソードやいろいろな業種に応用できる仮説などが興味をひいているのかもしれない。

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