2011年10月22日土曜日

官僚の責任(PHP研究所)

著者:古賀英明 出版社:PHP研究所 発行年:2011年 本体価格:720円
経済産業省を退官されたということで元官僚ということになる。ただ「改革派」官僚というレッテルは著者も不本意ではないか。経済産業の健全なる育成を図っていくという視点はむしろ経済産業省官僚の本流ともいえる。天下りについても「後ろぐらいシステム」とはいうものの完全否定はしていない。多少ムダづいかいと不正はありうるかもしれないが、一種の公共事業の変形と考えればわけのわからない財団法人などにも存在意義はあるかもしれない。公益法人からさらに売上をあげる民間事業法人もある。ただ、おそらくこの公益法人は市場原理主義による自由経済をメインにするのであれば、他のシステムに切り替えないと世界に負ける。役人の商売センスはいかにも非効率。天下りではなく別の形で公共事業はおこない、公益事業もなるべく民間事業にまかせていく…というのは穏健な考え方だと思うが、これでは経済産業省の天下り先は減少する(もちろん10年後には天下りはさらに厳しい世界になっていくだろう)。それでもなお、経済産業省が著者を退職においこまなければならなかった理由は、いくら官僚といえども国会議員にさからうというのは憲法違反になる(国会議員に選出された国会議員が行政を統治するというタテマエがあって官僚の権限も正当化される)。特に基礎産業の育成にあたる経済産業省としては国会議員の同意は不可欠だ。圧力は省内というよりもやはり国会議員のほうからが大きかったのではないかと推測する。東京大学法学部卒業でⅠ種キャリアの著者は、もうすこし立ち回りがうまければ別の人生があったのかもしれない。ただおそらくは、このままの経済産業省の方向性ではたちいかなくなる…という展望があったのだろう。この本を読むと改善点は非常にあきらか。ただし逆に「変化」を官僚システムにもちこむのは至難の業であることも逆説的に認識できる。

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