2011年10月11日火曜日

毒蛇の園(文藝春秋)

著者:ジャック・カーリイ 出版社:文藝春秋 発行年:2009年 本体価格:857円
新作「ブラッド・ブラザー」に始まり、その後第1作、第2作と迂回してこの第3作目。タイトルはエデンの園でイブを誘惑した「毒蛇」にかけてのことか。アメリカのミステリーなのに、なぜか「八墓村」を連想してしまう内容。サイドストーリーでは主人公と恋人の別れ話が進行するという暗く哀しい低奏音がかなでられている。第1作、第2作とは異なり、連続殺人事件ではなく、散発的に起こる不可思議な事件と南部の地方の暗い歴史の隙間を埋めていく作業が主役の刑事の役目だ。ハリウッドの映画がひたすら現代的で、国際的で、情報活用的で…とすると、このカーソン・ライダーと相棒のハリーの二人組はひたすら80年代的で、ローカル色豊かで、パソコンはほとんど使わなくて…という足を使った捜査重視だ。ちらっとgoogleを活用するシーンもあるが、それはこの二人組がパソコンを使うわけではない。もっともウェブを検索しているうちに謎がすべて解明された…というのでは、昔ながらの「捜査」は必要なくなってしまうわけだが…。登場人物の心理描写は一部はきわめて細かく描写されているが、それ以外はひたすら不可解な行動原理で動く。ただこの大雑把さがジャック・カーリイのいいところかもしれない。ときたま間にはさまるアメリカン・ジョークはけっこう笑える。

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