2011年10月3日月曜日

難局の思想(角川書店)

著者:西部進 佐高信 出版社:角川書店 発行年:2011年 本体価格:724円
80年代、90年代ならばこの二人の共著というのは想像もできなかったが、時代が変わると「なるほど」とも思う。旧来の図式では「左右」ということになるかもしれないが、今はむしろ「抑圧的な考え方」と「開放的な考え方」で立場を分類したほうがすんなりいくかもしれない。絶対的な正義をとなえるのが「抑圧的」で、「相対的な正義」をとなえる考え方が「開放的」ともいえるかもしれない。そうした分類でいえばお二人とも「開放的」ということになるのだろう。両者ともマルキストでもなく環境主義者でもなくフェミニストでもない。
で、取り扱っているテーマは、田中角栄、毛沢東、三島由紀夫、チェ・ゲバラ、ジョン・F・ケネディ、親鸞、司馬遼太郎と松本清張、マイケル・サンデルといった具合。個人的に一番面白かったのが「親鸞」。西部氏が浄土真宗のお寺の生まれで佐高氏が曹洞宗。奈良時代と平安時代の仏教が真言宗と天台宗で、その後法然の念仏仏教のもとで親鸞は修行。念仏弾圧で親鸞は越後へ島流し。次に禅宗である曹洞宗。そして元寇のときに日蓮の日蓮宗。その中で生活や「堕落に対するまなざし」をもっていたのが親鸞ではないか、という指摘になるほどと納得した。対話の妙で、ルターが「ぎっちりがっちり」でエラスムスが人間の堕落もそりゃしょうがないじゃんというアプローチで親鸞は「エラスムス」的という喩えがでてくる。その上で「総合的理解」(西部)をもとめるというスタンスが心地よい。対話ならではの発想のかけあわせが楽しめる一冊。面白いし、思想史のまとめにもなる。

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