2011年11月2日水曜日

パリの蜂起(新潮社)

著者:佐藤賢一 出版社:新潮社 発行年:2011年 本体価格:476円
農産物の不作と物価高に悩むフランス。財政赤字の再建のため貴族階級への課税をねらう財務大臣ネッケルは罷免され、全国三部会もルイ16世とその取り巻きに押し切られる。策士ミラボーはパレ・ロワイヤルに乗り込み、うだつのあがらない弁護士デムーランをたきつけて、民衆の怒りに火をそそがせる…。 名作「ベルサイユのばら」から何度繰り返しても読み飽きないフランス革命の歴史。時にはルイ16世とマリー・アントワネットの視点で、時には民衆の側の視点で。そのたびごとにきれいごとではすまないフランス革命の歴史の「裏」に流れる人間の「情念」の歴史を思う。人権宣言や民主主義といった「キレイゴト」ですまないのは、フランス革命以後も流れる粛清の歴史がある。またいかにマリー・アントワネットの「浪費」が過ぎたとしても、自分の子供とも離縁されてギロチンにかけられるほどの罪があったとも思えない。抑圧からの解放が、逆に抑圧を生むというのは、その後、スターリンが、そしてポル・ポトが歩んでいった道でもある。ロマン的にも見える「物語」だが、それでも冷たいリアリズムも垣間見えるフランス革命絵巻、第2巻。

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