2011年11月5日土曜日

海の都の物語 5巻(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2009年 本体価格:400円
貿易国家として隆盛をきわめていたベネチア。まずポルトガルが喜望峰をめぐるインド洋への新航路を発見したことで胡椒の貿易が苦しくなる。コロンブスのアメリカ大陸の「発見」はそれほど影響はなかったが、インドへの新航路はこれまでの地中海貿易を前提をくずすためベネチアにショックを与える。イスラムとの交易もおこなうベネチア共和国は聖ヨハネ騎士団などイスラムを反キリスト教国といちづける国々からは反感も招く。さらにトルコ帝国の東地中海への侵攻。貿易だけで対価の獲得が難しくなったベネチアは、毛織物工業、絹織物工業、石鹸、ガラス、めがねといった手工業も開始する。さらに出版業も自由の気風のあるベネチアで発達していく。その一方でキリスト教国とトルコの対立が不可避となり、レパントの海戦でキリスト教側はイスラム勢力をうちまかす。これはイスラム勢力の歯止めになるとともに、スペイン、フランス、ドイツといった君主制国家が小規模な都市国家の時代から勢力を伸ばし始めようとする時代の幕開けともなる。「通商」という一面からベネチア共和国の始まりと隆盛、そしてレパントの海戦からただよう「たそがれ」の時代までを描く。

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