2011年11月3日木曜日

「上から目線」の構造(日本経済新聞出版)

著者:榎本博明 出版社:日本経済新聞出版 発行年:2011年 本体価格:850円
この本かなり売れているらしい。なんとなく理由が分かるのは「なぜゆえにこの人はすべてわかっているような口調なのか?」「なぜゆえにこの人は自信たっぷりなのか?」と不可思議に思う機会が増えると同時に、無意識に自分自身が発した言葉が「上から見てるー」などと反応されることがあったから。一つには未成熟な人格と自信のなさが傲岸さにつながるという昔からの構図。これは別に今に始まったことではなく、ともすれば酒場の酔っ払いと同じで、無責任な場では大きな声になるがフォーマルな場所では小さくなるという構図。これは新しくない視点。ただ、もう一つはかつて以上に「空気」を読まなければ生きていけない雰囲気と市場経済の発達による交換価値の重視の傾向。市場経済重視では価格が「高い」人材が結果的には「価値も高い」とみなされる(傾向がある)。とすれば、イケメンであろうが高学歴であろうが、「市場価値が低い」人材は交換価値も低いとみなされてしまう。そういう構図では周囲との協調性が重視されるが、そうした「空気を読む」ことにたけていない人材というのは、ともすれば「上から目線」にもみえてしまう…。逆にまたそうした市場価値重視のなかでは自分が認識している以上に他人から低く扱われることに「怒り」を感じるものかもしれない。とすれば何気ない一言に「逆切れ」してしまうのもまた自信のなさや市場価値の予想以上の「低さ」に対する怒りの表れともみることはできる。いずれにせよ、「昭和」の時代よりも確実に市場経済は日本社会に定着した(少なくとも雰囲気的にはそうだ)。したがって、人間はまず自分自身の市場価値を高めようとすると同時に、必要以上に自分を低くみられることに過敏なのかもしれない。

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