2011年11月3日木曜日

海の都の物語 1巻(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2009年(文庫版) 本体価格:400円
ローマ帝国末期、アッチラが率いるフン族が乱入し、現在のベネチアに住む人間は海に逃げ場所を求めた…。「水の都」「海の都」ベネチア共和国の始まりだ。学習参考書では「イタリア」と乱暴にくくられてしまうイタリア半島の歴史だが、当時にはそのような国家はない。海洋都市国家であるベネチア共和国は、「貿易」を主たる産業として、東地中海に覇権をのばす。そして海のルートを柔軟に構築していくのだが、それはローマ帝国の陸の「道路」にも匹敵する国家の基本アイテムとなった。第1巻ではフランク王国ピピンの侵略やビザンチン王国と神聖ローマ帝国の間でいかにベネチア共和国の主体性を維持したのかが語られる。そしてまた第4次十字軍においては、フランスの騎士たちととともにビザンチンまでせめていき、ラテン王国を建立するに到るところまで。あまりこの時期のベネチアは評判がいいとはとてもいえないのだが、実利を重視したベネチア共和国として著者はその明るい側面に光をあてる。

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