2011年11月13日日曜日

ヒトラーの側近たち(筑摩書房)

著者:大澤武男 出版社:筑摩書房 発行年:2011年 本体価格:780円
ベルナルド・ベルトリッチ監督の「暗殺の森」という映画を昔みたとき、ファシズムというのは、後の時代になって大衆の責任そのものは忘れ去られるものだ…というようなことを感じた。イタリアにせよドイツにせよ、そして日本にせよ、ファシズムが台頭した場合、ヒトラーやムッソリーニなど印象に残る指導者がファシズムを牽引したように解釈されがちだが、実際には、その周辺でカリスマを持ち上げていった側近や、その側近を支持していった一般市民という存在がある。第一次世界大戦からのヒトラーの歴史を追いつつ、この本ではヒトラーの「周辺」の人々を取り上げているのが興味深い。一枚岩とみられがちなSSと国防軍との関係も微妙な対立関係をはらみ、ナチスの支持基盤は階級的には「下」からのものであったことがわかる。一つの国家や組織をみずからの野望の犠牲にしてもやむないエゴイズムの塊とその追従者。どこの時代にもどこの国にもいる「側近」という立場の倫理は思っていた以上に重いものかもしれない。

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