2011年11月4日金曜日

海の都の物語 4巻(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2009年 本体価格:400円
ベネチア共和国の前におとずれるオスマントルコの脅威の時代。ハンガリー、アルバニアと同盟関係を結び、オスマントルコに対抗しつつ商業国家としての成長をめざすベネチア。率いるマホメッド2世はこれまでベネチアが対抗してきたジェノバやフランク王国のピピンとはまるで違う思想と行動力を示す大敵だった。巻末には当時の聖地巡礼の様子が描写される。著者は別の書籍「コンスタンティノープルの陥落」でもマホメッド2世を描写しているが、冷徹かつ冷酷でありながら確かに人間的魅力にはあふれた人物だったようだ。戦争に勝利した段階で、職人や学者はそのままコンスタンティノープルに連れ帰り、自分の国に役立てた…というあたりもローマの歴史を通読していたイスラムのリーダーらしいふるまいだ。イスラムとの対決が不可避になった時代にこの貿易立国ベネチアはまた変化を余儀なくされる。15世紀後半のこの時代を描く4巻は、イスラムとの攻防を中心に一気に読みきってしまう面白さ。

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