2011年11月3日木曜日

映画長話(リトルモア)

著者:蓮実重彦 黒沢清 青山真治 出版社:リトルモア 発行年:2011年 本体価格:1900円
紙の質はやや悪いが、きわめて上質のデザインで、作り手の「意思」が感じられる本。けっしてお金がかかっているわけではないが丁寧な編集の仕事がみえる。索引や注記のつけ方がまず丁寧。さらに章扉がまた丁寧。白黒ではあっても映画の印象的なシーンと鼎談での印象的な一言がさらっと書き添えられている。けっして予算に恵まれて作った本ではないと思うが、映画評論がやや帝帝気味の2011年現在、こうした「映画」に真摯に取り組む作家と評論家の鼎談は、うまれるべくして生まれたのだろう。シネフィユ3人に対して「編集王」が立ち向かうといった構図だろうか。映画について語られているわけだが、もちろんこの3人の意見に「影響」は受けても支配される必要性はない。ただ「とにかく映画を見る」「楽しむ」ということに尽きるわけだし、そもそも映画に扇動する、画面を見る快楽に身をゆだねさせる…というのが、狙いだろうから、その狙いにそのまま読書とともにのっかるのが正当。書店で立ち読みしているうちに、一気に鼎談に引き込まれ、そしてレジに向かい、そのまま深夜まで読みふけり、朝になると文章は忘れているが、印象的な映画の場面がふと脈絡なくよみがえる…そんな映像重視の生活のトリッガーをひいてくれる不可思議な「書籍」。☆☆☆☆☆。

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