2011年11月23日水曜日

バスティーユの陥落(集英社)

著者:佐藤賢一 出版社:集英社 発行年:2011年 本体価格:495円
 フランス革命シリーズの第3弾。これから毎月文庫本が刊行ということらしいが、なかなかうまい出版計画。気がつくと文庫本の新刊コーナーでこのシリーズの最新刊を探している。3巻目にしてまだ1789年。全国三部会が憲法制定国民会議に衣替えし、人権宣言の発布に到る。フランス革命といえば「ベルサイユのばら」を思い出すが、その晴れの舞台となるバスティーユの陥落がこの文庫本でも最大の山場。ただし西洋史専攻の著者らしく歴史的史実をふまえて、バスティーユのなかにいた囚人はごくわづかで、しかも応戦していたのはスイス傭兵のみなど、冷めているようで熱い人民運動を描写。ルイ16世の一家がベルサイユからパリに移動する場面も非常に淡々と描かれているがそれがまたリアリティがあっていいんだなあ。これから憲法制定、さらにはロベスピエールの恐怖政治など、だんだんフランス革命の暗黒部分にこのシリーズは入っていくはずだが、文章と文章の合間にそうした暗い未来の予感がただよっていて、それがまた楽しい…。

0 件のコメント: