2011年11月25日金曜日

夢違(角川書店)

著者:恩田 陸 出版社:角川書店 発行年:2011年 本体価格:1800円
 「霧」に巻き込まれたことがある。あれはもう○○年前、自転車で箱根山を越えようとしていたとき、夜中に気温が低下。そのまま眠っては危険だと思い、自転車を押して箱根山の山頂を超えようとした瞬間、1メートル先も見えないほどの霧に巻き込まれた。この本の中でも「霧」がでてくる。時間も空間もねじれてしまう不思議な空間が奈良県吉野を中心に展開していく。途中、「あれこれユングの集合的無意識的なお話だったらいやだな」と思ったが、幸いなことにそうはならず、しかもある意味ではハッピーエンドにたどり着く。とてもそうはなりそうもないオドロオドロした夢の世界に読者はいざなわれるが…。ストーリーは細かいところでは実は破綻している。ラストもたぶん、男性読者であれば「なるほど」と思い、女性読者は「男のナルシズム」と切り捨てる可能性も。ただベアトリーチェは最後は主人公の前に姿を現さなければ地獄絵図はおさまらない。説明がぜんぶきっちり片付くミステリーではないものの、その不首尾がかえってラストの効果を高めているような気がする。

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