2011年11月29日火曜日

暴雪圏(新潮社)

著者:佐々木譲 出版社:新潮社 発行年:2011年 本体価格:710円
 グランドホテル形式で前半はそれぞれの登場人物がそれぞれの状況で「行き場」をなくしてさまよう様子が描写され、後半ではあるペンションに登場人物のほとんどが出揃う。そしてペンションの外は暴雪圏という趣向。会社の帰りに本屋で衝動買いして、読みながらファーストキッチン⇒サイゼリアとハシゴして数時間が読みきる面白さ。まあ、前半は屈折した人生が物語の趣向としても必要になるため、「やめてくれー」といいたくなるような屈辱感を読者も味わうことになるが、傑作長編「ユニット」と同様にラストの直前からすかっとした展開。主人公の駐在さんにはクリント・イーストウッドを彷彿とさせるものがある。筋立ても面白いが、ラストは本当に映画の一場面のような展開で、人気のいない北海道の町道で周囲は銀世界。捜査本部からの応援がこず、ミニ・パトカーを町道に斜めにとめて凶悪犯人が乗る四輪駆動車と真正面で向かい合うという構図。舞台は北海道で銀世界だが、底流はまるで西部劇の最後の果し合いのような場面。いいなあ。

0 件のコメント: