2012年5月16日水曜日

GANTSなSF映画論(集英社)

著者:奥浩哉 出版社:集英社 発行年:2012年 本体価格:700円
 ジョン・カーペンターという秀作もあれば駄作も多数ある監督の作品に「ゼイリブ」というトンデモ映画がある。サングラスをかけると宇宙人かどうかわかるという映画で、これを昔池袋ロサの湿った空気のなか大きなスクリーンで見たことがある。正直「なに考えているのか…」と絶句したのだが案外この映画を評価する人が多い。この本の著者も「アイデアが秀逸」と褒めているのだが、もう一度見てみようか…いやいや…と現在逡巡中。
 著者と同世代のせいかほとんど紹介されている映画は自分も見ている。「インデペンデンス・デイ」とか「プライベートライアン」とかあまり好きになれない映画もほかの人の視点では、やはり面白い部分もあるようだ。自分の視点を一回リセットする意味で、映画関係の書籍を読むのは楽しい。ターセム・シンの「ザ・セル」ってやっぱり面白かったしなあ…。ただ著者も指摘しているように1980年代~90年代と比較すると2000年代の映画はちょっと不振。けっしてレンタルビデオとかインターネットとかの影響ではなく、クリエイターが80年代の枠組みから抜けきれなかったのではないか。CGが発達しても画面そのものの切り込みはやはり人間のイマジネーションの問題と感性の問題だから、技術的なことではなく、なにかしらの切望感みたいなものがなくなっていたせいなのかもしれない。80年代と00年代の不作ぶりの対比もこの本でうかがえる。

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