2012年5月22日火曜日

うどんの女(祥伝社)

著者:えすとえむ 出版社:祥伝社 発行年:2011年 本体価格:648円
 いまだに生協のすうどんで100円以下なのだろうか。生協の食堂でうどんばかりを注文する油絵科の男子学生と,ひたすらうどんを作る35歳バツイチ女性との出会い…。
 年の差コンがわりと定着してきた昨今、この組み合わせはさして珍しくはない。女性が年上の場合には、だいたい女性の方が仕事をもっていて経済的に安定しており、男性のほうがやや生活の基礎が不安定。逆に男性が年上の場合にはその真逆という構図で説明される。経済不況のおり、男女ともに不安定では最初から安定した生活がのぞめないという事情も関係してくるが、この作品、そういうマルキシズム的な要素も目に見える形では排除(女性の自宅が描写されている場面では、けっこう所得階層が高い家であることはうかがえる)。
 世界がまるで違う二人がであったときにコミュニケーションがどうやって成立するか…をみていくとまず最初に必要なのはフォーマットの統一。ここでは「うどん」という媒介で両者の思考やら行動が初期化されていくのだが、いかんせん人間同士なので初期化に時間がかかっている模様。いずれにせよ関係の安定性はちと望めないというのが現実的な結末で、そもそも「関係」をいかに開始できるか…が見所か。リアリティは満載で非常によくできたストーリー展開。

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