2012年5月19日土曜日

崖っぷち「自己啓発修行」突撃記(中央公論新社)

著者:多田文明 出版社:中央公論新社 発行年:2012年 本体価格:760円
 情報量と売りにする本や専門色を売りにする本もあり、そしてこういう突撃ルポなどは最近少なくなってきたが、もっと供給が増えていいジャンルだと思う。「自己啓発」書籍の内容を著者が読んで実際に仕事に活用していくというルポだがこれが面白い。抽象的すぎる自己啓発をまず具体化していく作業が目に見える。で、たいてい一回目はうまくいかないのだが、それを独自に再解釈してまた再挑戦というあたりが、原典にはない面白さか。あまり自分としては役にたたなかった「レバレッジ・リーディング」がこの著者には適合したというのも、個人差があるのかな、と思わせてくれる。
 最大級に役に立つのは第4章にあたる「空間と時間の整理法」で、コピーで縮小書籍を作成したり、「捨てる基準」を立案したりといったあたりか。ルポライターの著者なので捨てる基準にはかなり困っている様子がうかがえて面白い。
 仕事の売り込みの部分も描写されているが実際に書籍を出したりテレビにでていても、新規の企画を出版社に通すのは大変な時代なのだなあとつくづく実感。自己啓発の具体化作業を見る本としても、また自己アピールやアイデアを実際の形にしていくプロセスとしても読める。フリーのライターを職業として志す人にも売り込みや企画立案を知るのにはいい本ではなかろうか。40代を過ぎたかつての担当編集者が会社を辞めたり配置転換されていて…のくだりにどきり。やはり出版って面白いけど大変な仕事なのだなあ…。

0 件のコメント: