2012年5月19日土曜日

死刑執行人サンソン(集英社)

著者:安達正勝 出版社:集英社 発行年:2003年 本体価格:700円
 安達正勝氏の「物語フランス革命」が非常に面白かったので「死刑執行人サンソン」も読破。ルイ16世の首をはねた死刑執行人シャルル・アンリ・サンソンの家系の話だが、当時不可触賤民とされていた死刑執行人は世襲制でサンソンは1代目から起算すると7代続いた。 有名な四代目のシャルル・サンソンになるとルイ15世の寵姫デュ・バリー公爵夫人、ラモット伯爵夫人、恐怖政治のころの幾多の政治家などの死刑執行を担当。死刑執行人ではあるものの平時には医療にたずさわり、さらには家系伝来の解剖学などの書物を読むために教育を施し…というフランス革命当時の死刑執行人の意外な生活面と考え方に触れることができる。民衆は当時も平気で虐殺をしていたはず(フランス革命はかなり生臭い虐殺が多い)だが、死刑執行人には距離をおき、それがまたインテリのサンソンを死刑反対に向かわせたと思われる。立憲君主制度に傾いていたサンソンが、ルイ16世を処刑したあとカソリック(ナポレオンの登場まではカソリックは違法)に救いを求める場面は感動的でもある。フランスでは1981年に死刑が廃止されている。この本では八つ裂きの刑など日本人には想定できないほど残虐な刑罰を実施してきた国だが、死刑廃止に向かわせた理由の一つにこのサンソンの「苦悩」も少しは関係がありそうだ。フランス革命そのものには興味がなくとも、死刑執行に賛成か反対かという視点で読むのも面白いと思う。

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