2012年5月26日土曜日

日本銀行は信用できるか(講談社)

著者:岩田規久男 出版社:講談社 発行年:2009年 本体価格:720円
 出張の新幹線の中で読み終えた本。東日本大震災があったが、マネーストック重視の日本銀行の方針は変わらない。タイトルはいささか過激だが「信用経済の基礎」を中央銀行が担うという意味あいがこめられているのだろう。数値目標などを明確化しない日本銀行に対して、中央銀行の自主的な数値目標の設定か政府による目標設定と政策手段の独立性の保持をセットで提案している。またインフレターゲット政策をとっているニュージーランドや英国の中央銀行についても紹介。「通貨価値の安定」はインフレのみならずデフレについても同様に主張されるべきという主張に納得。
 グラフなどはでてこないが簡単なISーLM曲線や総需要曲線などの知識があると、より中身がわかりやすい。ただしマクロ経済学の知識がなくても、かなりわかりやすい文章で解説が付されている。マネーストックがこれ以上過剰になるとハイパーインフレの可能性がでてくるという主張とデフレはマネーストックが供給不足にあるためインフレが2%以内であればむしろ資金を投入すべきという主張とがあるが、震災からの復興需要とデフレ局面を考慮すると、そろそろデフレ政策には限界がきているような印象を受ける。中央銀行の目標の数値化や「総合的判断」の具体化などは、情報公開の観点から日本銀行ももっとす全ていくべきだろう。これまで日本銀行はかなり物価の安定に力を注いできたことは間違いない。政策委員会のメンバーも日本の優秀な頭脳の集積だ。ただ商店街や下請企業の困窮は、このデフレ政策や時間がかかる構造改革などでは救済しきれないのも事実。そろそろ実験的であってもインフレターゲティング導入の時期にきているような印象を受ける。

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