2012年5月16日水曜日

みずうみ(岩波書店)

著者:シュトルム 出版社:岩波書店 発行年:1953年 本体価格:210円
 ドイツの市民文学とも純文学ともよばれるシュトルムの作品。19世紀前半、デンマーク王国の支配下からプロイセン王国所属の知事に就任。法律を勉強し、実際の仕事は法律畑で暮らすことが多かったシュトルムだが、21世紀の日本人が読んでもおどろくほどのリリカルな内容。行ったこともないデンマーク地方の光景が目の前に浮かぶ。インターネットも携帯電話もないから人間と人間のコミュニケーションは「詩」だった、と考えればなんとなく突拍子もなく散文詩が登場するのかも想像がつく。和歌などと同じようにお互いの知的素養を推し量るには、ある意味当時ではもっともてっとりばやいツールだったのだろう。「老人」の思い出という形式になるが、戦乱が続く当時と今とでは「老人」の意味合いも違ってくる。まだ先がみえない時代に想像する「老人」の懐古的な思い出が「みずうみ」。映像的なイマジネーションは絵画と、そして脳内のイメージだけがただ残る…。

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