2012年8月19日日曜日

中原の虹 第2巻(講談社)

著者:浅田次郎 出版社:講談社 発行年:2010年(文庫本) 本体価格:695円(文庫本)
 「ラストエンペラー」でもほんの少し西太后は登場していたが、大清帝国末期を支えた西太后が第2巻で没する。そして次期皇帝の愛新覚羅溥儀も登場。後の満州国の皇帝となる人物だ。
 これもキャンベルの神話論からすると英雄は境界線をこえた段階で、流動的で輪郭がない状態で試練に遭遇することになる。漫画「アイ・アム・ア・ヒーロー」でも主人公は伝染病がうずまく世界で一貫性のない不気味な世界で生き抜くことをしいられるが、溥儀や袁世凱などこの第2巻に登場する人物のほとんどが老婆からの託宣を受けて、イニシエーションに立ち向かう。史実として勝ち残るのは一応毛沢東ということにはなるはずだが…。神話はある意味では、あらゆる成長段階における人間に対しての指導規範となりうる(だからこそわかりやすい設定となっている)。この第2巻では年齢や性別にかかわらず登場人物が錯綜してイニシエーションに立ち向かい、悪役もまた善人の側面をもち、いずれは満州帝国崩壊に直面する(はず)。そうなるとますます、今のこの日本とそこに住む読者に共通点がでてくる予感が。

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