2012年8月11日土曜日

不動産絶望未来(東洋経済新報社)

著者:山下努 柳原三佳 出版社:東洋経済新報社 発行年:2012年 本体価格:1600円
 経済合理性を追求する山下氏と家の居住性やライフスタイルを追求する柳原氏との共作。個人的には山下氏の考え方に共鳴するが、ライフスタイルをひたすら追求する柳原氏の考え方も非常に魅力的ではある。
 アメリカのサブプライムローンでは低所得者層が自宅を失ったが、日本と比較すると実は被害はそれほど深刻ではない。アメリカの法律ではローンの支払いはノンリコースなので、ローンの対象となる家を失った場合には、さらにそれ以上のローンの支払いは原則として求められない。しかし日本の住宅ローンはリコース型なので、たとえば東日本大震災などで住宅ローン未済のご自宅を失った家庭にも、原則として銀行への支払いは続く(建設基準法違反で立ち退きを要求された事例でも実はローンの支払いはずっと続くというのが日本の制度だ)。35年ローンなどを組んで途中で大震災が発生して自宅を失った場合でもローンがそのまま続くという意味では、山下氏のいう「原発並み」の「持ち家リスク」という表現はきわめてまっとうな気がする。震災のあとなどは「2割以上の値下げにも応じる」ケースが紹介されているが、津波のリスクがここまで認識されている以上、海沿いや地盤の弱い不動産の販売状況は今後も厳しいのだろうなあ、と思う。資産価値や時間軸などを考慮にいれ、さらにライフスタイルも考慮して…となると個人的には「都心に」「マンションで」「地盤がしっかりしていて」「一定の年齢までにローンは払い終わっていて」「値引きにも応じてくれる」不動産を購入…というのが理想と思われるが、そもそもこのリスクが読めない時代に、不動産をもつ必要性すら疑わしくなってくるというのが実感。
 

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