2012年8月11日土曜日

闇の貴族(幻冬舎)

著者:新堂冬樹 出版社:幻冬舎 発行年:2010年 本体価格:838円
 文庫本で発行から2年経過しても書店で平積みされているというのは、そこそこ売れている本なのだとは思う。が、バブル期の80年代やそのあとの90年代を舞台にしたダークストーリーがさっこんメインになっているのは、やはりデフレ不況下では、悪事もデフレーションせざるをえないということなのか。いわゆる会社の自己破産のあとに手形やや小切手などをまきあげて、それを乱発し、筆頭債権者となってから残余財産をすべて手中にするという稼業を「整理屋」という。このビジネスでは債務額などはあまり問題にならず手元にある残余財産の処分価値そのものが目標となる。大手家電量販店の社長が最後の拠としたのが整理屋で…というストーリーなのだが、平成不況のもとでは今ひとつリアリティが欠ける。短期賃貸借など改正前の民法の規定も物語では残存しているほか、どれだけコストパフォーマンスが悪いのだろうという人材活用方法なども物語には登場。おそらく整理屋とバッタ屋との裏商売などは今でもけっこうありうるとは思うが、海外がらみとなるともはや日本国内にこのストーリーだけの魅力があるかどうか…。GDPが縮小するにつれて、貨幣の流通速度も一般には低下する(因果関係は別にして)。表も裏もそのへんは変わりがないのだなあと実感する小説。

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