2012年8月11日土曜日

「お金」おもしろ雑学(大陸書房)

著者:中江克己 出版社:大陸書房 発行年:1992年 本体価格:505円
 かつて存在した大陸書房の書籍で自己破産した1992年に発行されていたのがこの本。長らくこの本を古書店で購入していらい、ずっと積んだままだったのを仕事の関係で読んでみると案外面白い。もちろんその後の歴史研究の結果、富本銭など改訂が必要な部分はあれど、バブル末期の時代に「お金」についての関心がそこそこあったのが伺える。「お金」の歴史は残存している実物や歴史的文献から進められるが、古代の貨幣についてはやはり現物の発掘がないとどうにも弱い。日本最古の貨幣は「富本銭」らしいといわれているのも意外の最近の歴史研究の結果だ。またおそらくは金融の実務などで科学的ではないにせよ定着した呼称などもあるので、意外に新しい発見が難しい分野ともいえるかもしれない。物品貨幣が金属貨幣になって、それが紙幣になっていった…というと理屈としては筋が通っているが、日本だけでも最初は物品貨幣で金属貨幣も生まれたが、その後コメや絹などの物品貨幣が実際には流通し、さらには中国の貨幣のほうが価値が重視されていた時代をへて、ようやく明治維新で円や銭などの10進法の紙幣が登場してくる(藩札なども江戸時代にはあったが)。商取引そのものは漸次拡大傾向にあったが、その取引に用いられたものは必ずしも金属貨幣ばっかりではなかった(あるいは国内の金属貨幣ばかりではなかった)というのがなかなか興味深い。
 なお、この1992年に大陸書房は97億円規模の負債を抱えて倒産。ヒチコックの「下宿人」などのセルビデオを販売していたことがあり、CDなどコンテンツを廉価販売市場を切り開いた出版社だった。面白い会社だっただけになんだか残念でならない。

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