2012年8月20日月曜日

中原の虹 第3巻(講談社)

著者:浅田次郎 出版社:講談社 発行年:2010年(文庫本) 本体価格:695円
 中国の人口は清の時代に大幅に増加し、約4億人に達した…という説がある。農業生産力があまり伸びないケースで人口が増加すると食料不足に陥る。この第3巻では、清王朝の滅亡と張作霖による軍閥政治の拡大の時代が描写されるが、つねに底流には「貧困」のトーンが。
 そして通常の歴史の本では想像もしなかった大清帝国から中華民国への「権限委譲」の様子がこの第3巻で描かれる。科挙が廃止され、中国東北部では軍閥が活躍し、北京ではいつ東北から軍閥が攻め込んでくるか、あるいは南部の孫文が率いる革命軍がやってくるか…という時代に入り、「蒼穹の昴」の登場人物の影がようやく薄まってくる。
 その合間合間に明の滅亡の様子が描写されるのだが、中原、わけても北京の戦略的な重要性を著者は描こうとしたのかもしれない。天命がなかった李自成の様子がオーバーラップしてくるのは、まぎれもなく張作霖とその息子がたどる人生そのものなのだが…。ここまで張作霖がある種大きな器の人物として描かれているのも珍しい。

0 件のコメント: