2012年8月12日日曜日

先送りできない日本(角川書店)

著者:池上彰 出版社:角川書店 発行年:2011年 本体価格:724円
 消費税増税法案が可決したので、これで確実に2014年度に8%、2015年度に10%の消費税増税となる。この本ではおもにTPPや国際貿易の自由化について取り扱っている。TPPについては日本は実は周回遅れですでにアメリカや中国を軸にして交渉の枠組みが決まろうとしているので、これに参加しなければ国際的にはおいてきぼりであとから参加してもルールの作成にはなかなか携われない状況も考えられる。反対しても賛成せざるをえない状況ではないかと思われるが、日本の農業という産業はたしかにボコボコにうちのめされる可能性もあり、国内でコンセンサスを得るのは難しそうだ。これは広告宣伝というのを各政党がやはり今ひとつ効果的にうちだせていないことが原因ではないかと思う。「先送りできない」課題はいくらでもあるのだけれど、たとえば自由貿易推進派がよりどころとする比較優位の原則がTPPであてはまるのかあてはまらないのか、といった議論に反対派がなかなか乗り切れないでイデオロギー闘争みたいになってしまっているのが残念だ。自由貿易では各国が経済成長ととげつつ、GDPを拡大していき、生活が豊かになる可能性もあるのだが。議論なり賛否なりはある程度、賛否以前に議論の水準なり展開なりを同一平面でおこなわないと、いたずらに時間がすぎていくばかりといった印象を受ける。
 で、この本では一応一般的議論をわかりやすく展開してくれているのだが、統計データやグラフが少ないのと参考書籍などの一覧がないのが残念だ。よってたつ基盤が明らかになればもっと説得力がでるだろう。
 また社会保障費関係の増大と財政赤字の問題も、そろそろ切り離して議論するべき時期に来ていると思われる。確かに社会保障費はこれから支出額は年々増加していくだろうが、財政赤字の原因が社会保障費関係にあるのかないのか、というところで疑問が生じる。わかりやすい議論と、妥当な結論が得られる論理展開はやはり違うものであるようだ。

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