2012年8月16日木曜日

蒼穹の昴 第2巻(講談社)

著者;浅田次郎 出版社:講談社 発行年:2004年(文庫本) 本体価格:590円
 単行本と文庫本とでは、同じ内容であっても読者の印象は大きくことなるような気がする。特にこういう大部の書籍になると単行本のほうが「一気読み」に適していて、文庫本のほうが少しづつ読み進めていく感じがする。最近は単行本で発売して数年経過してから文庫本化されることが多いけれど、同じ内容を単行本と文庫本でそれぞれ読んでみる…というのはそれほど意味がないわけではないと考える。第2巻では西太后を中心とする宮廷派と光緒帝を中心とする変法自強派との争いが深まる場面が描かれる。李鴻章は大方の予測に反して西太后にたより頼られ、袁世凱はまた西太后につきつつも野心をかくして動き始める。歴史を振り返れば日清戦争あとの変法派の「敗北」はもう間近で科挙制度の廃止も間近な時代に、同郷の文秀と春児はそれぞれ科挙に合格した進士と宦官としてそれぞれ国の中枢部に地位を占めていく…。「清」という国はそもそも「明」という漢民族の国を滅亡させたわりには、異民族統治に成功した国だった。それは漢民族であっても科挙や宦官制度で優秀な人材を取り込みつつ、チャンスの平等は人民に保証していたせいかもしれない。またモンゴル民族に対してはモンゴル民族の慣習を重んじるなど、かつてのローマ帝国さながらに異なる文化に対して配慮をみせていたのが成功したのかもしれない。それが次第に組織の腐敗と腐臭を招き、西太后の独裁政治になっていった過程はあまりにも土地が広大すぎて人民が多すぎたせいかもしれない。国が滅亡していこうとするさなかに試行錯誤していく20代の青年たちの必死さが痛々しい。

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