2012年8月15日水曜日

蒼穹の昴 第1巻(講談社)

著者:浅田次郎 出版社:講談社 発行年:2004年(文庫本) 本体価格:629円(文庫本)
 初めてこの「蒼穹の昴」を読んだのは10年以上も前の単行本。すでに粗筋は知っているものの、大清帝国の末期の黄昏の雰囲気は10年以上続く日本の逼塞感をやや共通するものがある。映画「ラスト・エンペラー」では西太后の死去から溥儀が帝位につき、満州国が滅亡するまでが取り扱われていたが、この「蒼穹の昴」では、太平天国の乱が終わり、清仏戦争の賠償問題が争われている時代になる。
 歴史を知っている立場としては、このあと中華民国が成立して宦官制度も大清帝国の官僚制度も崩壊することを織り込んで「物語」を読んでいる。だから冒頭に予言されている文秀の成功も春児の「成功」もそのまま額面通り受け取るわけにはいかないわけだが…。
 「逼塞感」に取り囲まれて、犬のように取り扱われてきた春児や、家族から疎外されてきた文秀が、それでも「世間」と戦おうとしている姿が胸をうつ。ジュンガル帝国やチベット遠征を手がけた乾隆の時代を織り交ぜながら、西太后の権威が宮廷のすみずみに及ぶ1886年夏までを第1巻では描く。

0 件のコメント: