2011年12月29日木曜日

からゆきさん(朝日新聞社)

著者:森崎和江 出版社:朝日新聞社 発行年:1976年 本体価格:780円
 ルポタージュの名作も月日が流れ、朝日新聞社は廃刊にした模様。ただしamazonなどでわりと迅速に入手は可能。1976年当時の著者の友人とその母をめぐるエピソードから、明治時代~昭和の初めに海外へ働きに出た女性のエピソードとデータを収集、再構成された作品。21世紀の日本では当時とは逆にロシアや韓国から女性が出稼ぎにきているようだが、戦後の高度経済成長期を乗り越えるまでは日本女性が海外にでかけていた。「サンダカン八番娼館」と同様に島原地方や天草地方の出身者が多い理由も、人口の増加と土地の生産力の弱さに大きな理由があると思われる。今ではこうしたルポを書くことも難しい時代になったのと同時に、生き残った女性の数も少なくなったのだろう。清国や韓国の男性と日本男性の「比較像」や、明治時代の村落共同体の様子などもうかがうことができる。この本はやはり今だからこそ読み直されるべき本かもしれない。「貧困」がもし当時の「からゆきさん」を生んだのであれば、長期の不況が続くいまだからこそ「国内のからゆきさん」も眼に見えない形で大量生産されているかもしれないからだ。

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