2011年12月19日月曜日

聖者の戦い(集英社)

著者:佐藤賢一 出版社:佐藤賢一 発行年:2011年 本体価格:495円
 歴史の大河小説を分割発行していくという手法は新潮社の「ローマ人の物語」シリーズが最初か。このフランス革命シリーズも1月1冊のペースで刊行予定だが、だいたい新刊コーナーに最新作が並ぶのを心待ち。「聖者の物語」では、カソリックの聖職者階級の財産が国有化され、議員内閣制をめぐってロベスピエールとミラボーが決別する状況を描く。ジャコバンクラブの筆頭として頭角をあらわしたロベスピエールはダントンらの支持を受けて、普通選挙を制限するマルク銀貨法の撤廃に動く…。ルイ16世やマリー・アントワネットをベルサイユからパリに拉致するところまでは、芝居や小説にも取り上げられることが多いが、さらにその後の聖職者と市民、市民のなかの有産市民と無産市民との対立まで描いたのは、この本が初めてではなかろうか。武力闘争などもなく、陰湿な「かけひき」がメインになってくるが、この後やってくるのがジャコバン派によっておこなわれる恐怖政治。純粋であるがゆえに恐怖政治をおこなうことになったロベスピエールの怖さがひたひたとおしせまる。

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