2011年12月6日火曜日

透明人間の告白 下巻(新潮社)

著者:H.F.セイント 出版社:新潮社 発行年:1997年 本体価格:667円
 追われて追われて、さらに追われて…の透明人間は、つかの間の安住の地をみつける。ただしそこも永遠の安住を保証してくれる場所ではなく…という展開は映画「ブレードランナー」のラストを連想させる。物理的実験から生み出されるモンスターというのは産業革命以後数多くリフレインされてきたテーマではあるものの、「フランケンシュタイン」のような予定調和的な悲劇でもなく、「タイムトラベル」のようなある意味底抜けに明るい未来像でもなく、地に足がついた日常生活を極限まで推し進めて、最後はそれを人生哲学にしてしまう「透明人間」。これって現代人のもっとも理想的な生き方ではあるまいか。SFの古典とするにはまだ時間の経過が浅いものの、21世紀初頭の現時点では類作なしの近現代SF古典間違いなし。

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