2011年12月25日日曜日

黒いスイス(新潮社)

著者:福原直樹 出版社:新潮社 発行年:2004年 本体価格:680円
 永世中立国スイス。小国といえどもかっちりした国の個性と気品を持つ国だが、日本がめざす将来像としてはなじまないのかもしれない。オーソン・ウェルズが「第三の男」のなかで「スイス100年の歴史は鳩時計しかうまなかった」という名言を残しているが、この本を読むとどうしてどうして。小国であるがゆえかもしれないが、第二次世界大戦中には、ユダヤ系オーストリア人などの入国を拒み、入国させてもビザに「J」のマークをつけたり、ロマ民族を隔離したりと、けっこうな差別政策。さらには、犯罪収益にまつわるスイスの金融機関の歴史や、現在もつづくネオナチの影などが紹介されている。これがもし地理的にも面積が広い国であれば、こうした人種差別的な政策はとりえなかったのかもしれないが、小国のなかに四方八方から移民がはいってくると、スイス国民の失業率が増加していくというジレンマと、シャドーソサエティができることで治安の悪化が懸念されていたのではないかと思う。日本についても移民もしくは不法移民が数が多いと思うが、人道的な見地からの移民許可と不法移民の問題はきっちり分けて議論すべきだし、国内の「シャドーソサエティ」と多様な価値観とは別個に分けて議論していくべきなのだろう。EUにスイスが加盟する可能性が少ないことも、この本を読んで納得。

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