2011年12月9日金曜日

フランス革命の肖像(集英社)

著者:佐藤賢一 出版社:集英社 発行年:2010年 本体価格:1000円
 現在集英社文庫から毎月1冊のペースで刊行されている「小説フランス革命」シリーズ。もちろんこのシリーズだけ読んでもオモシロいのだが、想像力を刺激してくれるのはやはり実際の歴史上の人物の顔。そこでこの本ではフランス革命の歴史をおいつつ主要な人物の多彩な肖像画を一気に掲載。それを著者が解説していくという構成をとる。コート紙に4色印刷ということで176ページの新書ながら本体価格は1,000円。ただし1,000円の投資分は十分に回収できるほど内容は面白い。フランス革命自体、マルキシズムの唯物史観ではいまひとつすっきり説明できない複雑な進行をとる。登場人物もわずかの間にめまぐるしく入れ替わる(ただしジョゼフ・フーシュは除く)。ちょうど全国三部会が召集される1789年ごろからナポレオンが皇帝になる1904年ごろまでが収録されているが、当初のミラボーやらシェイエスやらといった人物は途中でほとんど全員病死しているかギロチンにかけられている。種々の理想や政治的思惑で多数の人間がそれぞれ動き惑い、そして勝利したのは、フランスという「国家」だった…ともいえるかもしれない。人権とか自由などの言葉が生み出されてもなお、おそらくこのフランスという国が自由を体感できたのは、ナチスドイツの侵攻からフランスが解放される20世紀初頭になるのかもしれない。

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