2011年12月15日木曜日

ボロボロになった人へ(幻冬舎)

著者:リリー・フランキー 出版社:幻冬舎 発行年:2009年 本体価格:495円
 筋金入りの「職業左翼」やら「労働組合」やら「革新系政党」などの主張には、今一つ共感できる部分が少ない。「まあまあ悪いようにはしないから…そのかわり俺たちのいうことをキケヨ」的な押し付けガマシサが非常にイヤだ、というのがある。経済的にボロボロになった人や都会に疲れた人や良心の呵責に苦しむ人や過去と現在に縛られている人や失踪したくなる人などは、一種ボロボロになった人たちだ。そういう人たちに向けるメッセージって、たぶん、「最低賃金をあげろ」的な言い分ではなくて、こういう本のような斜に構えたメッセージではないかな、と思う。きわめて日常的にすぎる毎日を過ごすなかで、ふとした瞬間に誰しもが思い出す「ボロボロ」だったとき。人は何度も「死んで」、何度も「再生」する。リリー・フランキーの描いたこの短編集は、いっけん動物的な世界のようで、実は冬に枯れてまた春に花を咲かすきわめて植物的な強さの世界なのだと思う。

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