2011年12月26日月曜日

用心棒日月抄(新潮社)

著者:藤沢周平 出版社:新潮社 発行年:1981年 本体価格:705円
 司馬遼太郎さんの本は、会社の経営者が読むことが多いという。一方藤沢周平さんの本は、従業員側の人がよく読むという。一種の都市伝説みたいなもので、実際にはどちらも時代劇ファンは読むのだろうが、国家とは何か、時代の変遷とは何かといったマクロな視点を司馬遼太郎さんの本は常に内包しているのに対して藤沢周平さんの本は、その時代のその人はどうしたかといったミクロな視点が多いとはいえると思う。この本では、とある北の藩にて内部抗争が持ち上がり、江戸に逃げてきた青江又八郎28歳が、口入れ屋の口利きであちこちの用心棒を引き受けて日銭を稼ぐという話。伏線として、赤穂浪士の討ち入りがはられている。身を裏長屋にやつせども、主人公は常に自分のモラルを維持するとともに、故郷に支えられているというのがいいんだなあ…。これ、日本の会社に置き換えると、個人の倫理はどこかで犠牲にして、しかも家庭も親族も打ち捨てて…という企業戦士になっちゃうと、なかなか青江又八郎のようにすらっと生きることができなくなる…ということの裏返しかもしれない。村の論理に制約されていると、村以外の論理が働く世界では無機能化する(役立たず化する)っていうのと、どこか似ている。

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