2011年12月25日日曜日

ジャッカルの日(角川書店)

著者:フレデリック・フォーサイス 出版社:角川書店 発行年:1979年 本体価格:819円
 エジプト神話では「アヌビス」として壁画にも描かれる死の神ジャッカル。ブロンドで長身で銃の扱いにたけたプロが、アルジェリア紛争にゆれるフランスに姿をあらわす。それを迎え撃つのは、小柄で恐妻家のクロード・ルベル警視。味方であるはずの大統領府の大佐などから足をひっぱられつつも、姿をみせないジャッカルを次第に追い詰めていく…。この本を読むと携帯電話やウェブの発達はスパイモノの世界をずいぶん狭くしたものだと実感。ビザやパスポートの偽造なども、当時のアナログ世界と比較すれば、今のほうが偽造そのものは非常にやりづいらいはず。追う側のフランス司法警察のルベル警視も魅力的だが、負われる側のジャッカルの知恵の働き具合も見事。世相はインドシナから撤退し、第四共和制からドゴールの復帰による第五共和制をむかえた時代。英国とフランスとの間もぎくしゃく(今でもぎくしゃくしていると思うが…)し、レジスタンス活動がフランスでは何よりもの誇りとされていた時代にむかえたドゴール暗殺計画。一時の熱狂では行動しないと断言するジャッカルは、「ゴルゴ13」のプロトタイプか。奥付は2008年5月30日で45刷。翻訳ものではやや弱いと思える角川書店文庫のなかでは圧倒的に稼ぎ頭の文庫本ではないかと推測する。活字の級数がやや小さい。判型がやや大きめなので、機会があるときに写植データを別のモリサワのデータで打ちかえれば、もっと新しい読者が獲得できるような気が。

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