2012年3月30日金曜日

岳物語(集英社)

著者:椎名誠 出版社:集英社 発行年:1989年 本体価格:429円
 学生時代に三宅島を旅行したことがある。芝桟橋から一昼夜をかけてフェリーに乗り込み、早朝に三宅島に到着。当時は米軍記事を三宅島に作るか作らないかで三宅島を二分する議論が行われていた。その夕方、とある民宿に飛び込みで「部屋はありませんか」とお願いして、ここちよくとめてもらったのが、この「岳物語」にでてくる民宿「さざなみ」の玉城長之助さん。晩御飯のお刺身は美味しかったが、この民宿に椎名誠親子も泊まっていたのだ。
 手持ち無沙汰に部屋で横になっていると玉城長之助さんが、当時の「岳物語」を手にもって、
「椎名誠という作家は知っているか」
「その椎名誠さんがこの民宿に泊まったのだ」
「そしてここに私も登場しているのだ」
と嬉しそうに話しかけてきた。椎名誠さん、単に民宿に泊まったというだけではなく、単行本を登場した人に献本もされていたのだ。当時は三宅島の噴火もまだおさまったばかりで、その後の島民の避難が始まる前のこと。数冊の本だけもって民宿にとまっていた私は相当に「うろん」な客だったと思うのだが、なんの関係もない宿泊客で記念写真をとったりするなど、案外楽しい思い出だ。1980年代にこの本の存在を知って、きっちり最後まで読んだのは2012年。25年以上が経過しているのだが、それでも三宅島で食べた味噌汁やお刺身の味を思い出す。時間が4分の1世紀、タイムスリップしたかのようだ。

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