2012年3月15日木曜日

13階段(講談社)

著者:高野和明 出版社:講談社 発行年:2004年 本体価格:648円
 「グレイブディッガー」が面白く、さらに遡って本作品。ページをめくっていきなり小説の世界に引き込まれる。犯行時刻の記憶をなくした死刑囚と死刑に反対する刑務官。そして傷害致死で服役していた青年。保護司というあまり知られていない聖職のありようや刑務官の世界も垣間見ることができる。恩赦という制度についても理解できるなどのメリットも。「グレイブディッガー」と同じく後ろめたい過去や社会に対する引け目を負う男が、見知らぬ人を救おうとして限定された時間を駆け抜ける。やはり超人的な体力も資力もない主人公だが、「知恵」と「根性」だけはあるという設定。やはり小説の主役には「影」のある主人公がいいなあ。この本設定がまあ純和風で世界的なストーリーではないのかもしれないが、その分、日本家屋的な怖さがぷんぷん。社会の「湿った空気」みたいなものがあちこちから漂っていてそれが良い。著者の主義主張からか、「そんなの聞いていなかった」というような設定はない。読者のほうで注意深く読んでいれば、何が切迫していて切り抜ける条件としては何がそろっているのかはフェアに物語に呈示されている。

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