2012年3月26日月曜日

聖☆高校生 1巻~11巻(少年画報社)

著者:小池田マヤ 出版社:少年画報社 発行年:1999年~2010年 本体価格:667円~705円
 第1巻から最終巻まで11年をかけた知る人ぞ知る名作とされている漫画。独自の漫画シリーズを発行している少年画報社からの出版だが、「よくぞここまで」というエゲツナサと理想への渇望が混在。漫画そのものも四コマありストーリー漫画ありと自由闊達なコマ割で進行する。主役はいずれも「高校生」だが、「いじめられっ子」だった「神保」がひたすら逃げまくるというストーリーで、「いじめっ子」からも物理的に逃げるほか、初恋の相手への罪悪感から人生そのものからも「逃亡」。そしてまた「復帰」。という「逃亡」と「復帰」の連續劇。主に扱っている題材は「性」そのものだが、これ「人生」「社会」「職業」「趣味」…別になんでもあてはまることではないかと思う。「逃げて逃げて逃げて」…の究極の果てにまた「スタートポジション」に立ち返る物語構造だが、同じようでいて実は微妙にその前の状況とは違っているというのが味噌。第2巻から最終巻まで読後感はあまりいいとはいえないのだが、「またスタート地点に立ち返って、でもまた逃亡して…」という循環構図、おおかたの普通の「社会人」でも身に覚えがあるのでは。「逃亡したことにも意味がある」っていう意味深なセリフも出てくるのだけれど、逆に「意味がある」って再確認しなければならないほど、「逃亡」がもたらす罪悪感は大きい。単純な円循環だと直線的な思考になれている人には耐え難い状況になるのかも。でもグルグル円を描きながら、その振幅がどんどん広がっていくという拡大思考で考えることができれば、こういう漫画、実はけっこう「巨大教養漫画」ということが理解してもらえるのでは。

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